年頭ご挨拶


どうしたら母校へのアイデンティティを
高めることができるのか

―創立100周年に向けて―

朝陽同窓会 会長 田中 俊郎(第17回)

 新年明けましておめでとうございます。昨年5月の総会の議を経て、垂水尚志先輩(第15回)の後任として朝陽同窓会の会長に就任しました。

 私は、新宿高校を卒業後、慶應義塾大学法学部政治学科に進学し、同大学院修士課程修了後法学部助手に採用され、以来2011年3月に定年退職するまで40年間ヨーロッパの国際政治、とくにEU(欧州連合)を中心とするヨーロッパ統合の研究と教育に従事してきました。その間、2001年から2005年まで、学校法人慶應義塾の常任理事を務め、その所管の一部が三田会(同窓会)でした。慶應での経験が朝陽同窓会に活かせればと思っています。

 私のこれまで朝陽同窓会との関係は、六蹴会(サッカー部OB会)と約10年前から第17回の代表幹事として代表幹事会や総会に出席することでした(出席率は高かったといえませんが)。

  第17回は、不定期的に同期会を行ってきましたが、卒業40周年(2005年)を経て、還暦(2007年)から昨年の古稀まで、毎年(3.11の年を除いて)同期会(幹事はクラス単位のローテーション)を開催するようになりました。その間、卒業50周年(2015年)では、祝賀会、『朝陽』第64号への寄稿、「朝陽クラブ」でのショート・スピーチ、総会での記念講演などを企画しました。

 このように、各卒業年の横につながりは、極めて高くて強いと想像できます。実際、会長として昨年参加した第18回生の卒業50周年および第28回生の卒業40周年の祝賀会も150名を越える盛況でした。

 しかし、心配なことは、若い世代の同窓会加入率の低下です。私たちのころは、卒業アルバムの代金などと一緒に同窓会の入会金も学校で徴収され、卒業と同時に自動的に朝陽同窓会員になっていました。しかし、10年ぐらい前から、卒業直前に子女が朝陽同窓会員になることに保護者の承諾書の提出と入会金の振込をすることになり、同窓会に入らず、名簿にも記載されない卒業生が増えてきました。それは、朝陽のネットワークから外れるとともに、同窓会の収入減にもつながります。そこで、2015年の入学生から「予納制度」を導入し、毎年入会金の三分の一づつ納めていただき、卒業時に承諾書を提出することになりました。学校側のご理解と歴代同窓会の役員・事務局員の皆様のお陰です。一人でも多くの卒業生を朝陽同窓会に迎えたいと思っています。同時に、若い内から同期会を開催することを奨励するため、立ち上げ費用の一部を補助しています。

 次の問題は同窓会員の会費です。『朝陽』発送者数の内、会費が免除されている卒業5年目までの会員および寿会員(80歳以上)を除いて、会費対象人数は13,696名ですが、2016年度会費納入実績は、24.3%です。1975年3月卒業の第27回生から下の代の納入率はさらに低下傾向にあります。

 どうすれば同窓会員、とくに若い会員に「新宿高校」を思い出し、「新宿高校」に「アイデンティティ」をもっていただけるのでしょうか。一つの方法は、卒業年の横のつながりに加えて、縦のつながりを強化することです。すでに、運動部や文化部のなかではOBOG会が長く活動しています。近年、朝陽同窓会事務局では朝陽祭(旧学園祭)にOBOGが参加することを依頼しており、館山寮(旧塩見寮)で行われる1年生の臨海教室を全面的に支援してくださっている朝陽水泳会をはじめ、朝陽剣友会、朝陽バスケットボールクラブ、朝陽バレーボールクラブ、軟式野球部OBOG会、硬式野球部の朝陽白球会、サッカー部の六蹴会、新宿アスリートクラブ(陸上競技部)、柔道部、ラグビー部、文化部系では、六声会合唱団、生物部、放送研究部、天文部、管弦楽部、囲碁部などのOBOG会、絵画部のOBOGを中心とするゼロの会、有志による朝陽バラ会などがあり、昨年9月に誕生したばかりの朝陽硬式テニス部会などもあります。朝陽同窓会では、他の部のOBOG会の組織化も支援しています。

 縦の組織化のもう一つは、地域支部です。多摩、東海、関西、九州、群馬県、宮城、北海道、朝陽USAまであります。その内、昨年は多摩、宮城、九州、群馬県の総会に出席させていただきましたが、六中時代の大先輩から現役の大学生まで、幅広い年齢層を縦につなげる幹事の皆様のご努力に敬意を表します。地方転勤の方は、是非ご連絡を。さらに、支部を広げたいと思っています。

 同窓会の目的は、第1に会員の親睦と向上を図ることと、第2に母校との緊密は関係を保つことであります。既にご案内のように、母校は、東京府立第六中学校として開設されて以来、2022年(平成34年)には、創立100周年を迎えようとしています。次の東京オリンピック・パラリンピックの2年後です。

 しかし、100周年記念事業はすでに始まっています。朝陽奨学金の創設、館山寮の改築など、具体的に動き始めています。それを支えるのは、同窓会会員の皆様から募金です。2016年11月11日現在の募金総額は、目標1億円に対してご協力いただいた総額は、目標の約27%です。このため、本年3月末で記念募金第1期を終え、4月以降第2期をお願いすることになろうかと思います。2月の代表幹事会でご了解を得なければなりませんが、若い方を含めて寄付者の裾野を広げていくことと、1度といわず複数回の寄付をお願いすることなどを考えています。さらに朝陽同窓会は、人格のない社団(任意団体)のため、学校法人や公益法人とは異なり、寄付の税法上の優遇措置がなく企業の損金扱いにならないため、個人の篤志家の寄付をお願いすることになろうかと思います。

 そのためにも、同窓会会員の皆様に新宿高校に意識を向けていただくためには、現在の新宿高校を知っていただくことが重要です。昨年11月19日に初めて「ホームカミングデー」を開催しました。普段は入れない三代目となる校舎内の見学、講演(私が『なぜ英国はEUから離脱しようとしているのか』と題して)、業間体操(現、新宿体操)、100周年事業の一環として誕生した混声の朝陽合唱団のコーラスなどを催し、約150名の皆様のご参加を得ました。垂水前会長が提案されていた異業種交流にも発展させることができるのではないかと考えております。

  同期の横のつながりと多種の縦のつながりを育てて、かつては「大家族主義」、最近では「チーム新宿」と言われる「自由で」、「暖かな」校風を発展させていただきたいと思っています。是非、皆様のご協力と積極的なご参加をいただければ幸いです。

 昨年は、国民投票による英国のEUからの離脱決定、米国におけるトランプの大統領選挙勝利と、これまでの常識が通用せず、先行きが読めない状況になりました。そのような不安定な状況が続くことが予想される2017年ですが、皆様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。