財団朝陽会資金収支

・経緯

 1923年(大正12年)発足した財団法人朝陽会は、約100年の歴史がある由緒ある組織です。この活動マップでは連綿と続く財団をどのように財政面で運用してきたか、資金の収支と言う観点で分析したいと思います。

 ただし何分古い時代のときの資料が完全には揃っていないので、話を2003年(平成15年)から始めることとします。ちょうど現在利用している第3代目校舎の建築が始まったころからの話です。


・ 2003年度(平成15年度)~2004年度(平成16年度)

 1967年(昭和42年)に4,500万円の費用を投じて改修した館山寮でしたが、その後36年を経過して老朽化が激しく、また女子生徒数の増加により女子部屋が足りなくなるなどで大規模な改修が必要となりました。

 そこで当時の朝陽同窓会長で財団理事長でもあった山之内秀一郎さん(S04)や財団副理事長で新宿高校校長の小栗洋先生などが中心となって、卒業生を対象にした改修のための募金を始めました。結果2年間で2,358万円の募金が集まりました。

 しかし既存の建物の改修や女子棟増設、あるいは排水処理設備の増築のため総計4,913万円もの改修費が掛かり、募金との差額は財団の預金から支出することとなりました。

 この改修の設計は当時新宿高校の第3代校舎の建築を請け負っていた大成建設(株)に依頼しました。そして施工は館山市の石井工務店が行いました。改修の監督は一級建築士で、当時の朝陽同窓会幹事長の松本勇吉さん(中21)が担当されました。松本さんは何回も館山に赴かれ、現場の監督指示を行いました。
年度 賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 現預金残
2002(H14) 5,703
2003(H15) 465 1,517 -375 7,310
2004(H16) 468 841 -4、913 -228 3,478
単位:万円
 *)運営費とは通常の在団運営にかんする費用で、寮使用料収入(臨海教室参加生徒、一般宿泊客からの収入)から館山寮の賄に支払う委託費や光水熱費などを差し引いたものです。


・2005年度(平成17年度)~2007年度(平成19年度)

 前年度に大規模な建物の改修や女子棟増設、あるいは排水処理設備の増築を行ったのですが、2005年度に入りボイラーが老朽化したので、石井工務店に依頼し314万円を掛けて新設せざるを得なくなりました。この設備投資は財団の預貯金から支出しました。

 さらに2006年には男子棟のトイレの改修と浴室で807万円の改修が必要となりました。この工事も石井工務店に頼んで実施しました。段々財団の資金がひっ迫してきたので、朝陽同窓会が受託していたあい基金の内、ご遺族の了承を得て800万円をこの工事のために使わせて頂きました。

 財団の資金収支が段々先細りになることを憂いて、2007年5月28日に財団は理事会を開催し、今後の財政改善計画を策定しました。主な結論は下記の通りです。

-設備投資について
 +今後設備投資が必要な場合は広く募金を募ることし、設備投資の為の積み立 ては行わない。
 +利用を停止したについては、今後から毎年50万円の取り壊し費用の為の積み立てを行う。

-一般収支について
 +何も対策を講じないと年間36万円の赤字が生じる状況にあることを理事会の共通認識とする。
 +従って下記の対策を講じる。
   ・2006年度は323名の新入生全員から賛助会費15,000円/人を受け取っている。今後も新入生からの賛助会費の全員入金を目指す。
   ・現在財団の事務を委託している朝陽同窓会に対し、年36万円を支払って いる。しかし今後は無料化する様請願する。
   ・館山寮の一般宿泊者数を現在より100名増加させるよう、更に広報を行う。
   ・財団法人朝陽会の窮状を朝陽同窓会会員に知らしめて、今後も募金を募る。

年度 賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 現預金残
2005(H17) 471 13 -314 -493 3,155
2006(H18) 457 839 -807 -450 3,194
2007(H19) 484 -412 3,266
単位:万円


・2008年度(平成20年度)~2010年度(平成22年度)

  2008年度と2009年度は特に大きな館山寮の修繕などなく、平穏に推移しました。

 2010年度に入り、新たに独立した女子棟を建築しようと言うことになりました。これは新宿高校の単位制への移行の結果、男女別の入学者数の制限がなくなり、女子の人数が男子に比べ多くなったことに起因します。

 新設する女子棟の新築費用850万円は全て財団の預貯金から支出しました。これにより資金の運用はさらに厳しくなりました。

年度 賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 現預金残
2008(H20) 475 -352 3,389
2009(H21) 488 -274 3,603
2010(H22) 384 -850 -362 2,775
単位:万円


・2011年度(平成23年度)~2013年度(平成25年度)

 財団法人朝陽会は2011年8月12日に一般財団法人都立新宿高等学校朝陽会へと移行した。従来に比べ資金の運用管理は一段の厳しさが増しました。

 2011年には東日本大震災が発生し、その影響で臨海教室の開催も中止となりました。当然臨海教室開催による寮使用料収入はなくなりました。しかし臨海教室の中止決定が5月になったため、給食委託先への補償が発生ししました。なお一般宿泊は受け付けたため、食事提供のための費用も必要となり、或は管理人の給与や保険料といった固定費も当然発生しました。結果として資金収支にも影響しました。

2012年度と2013年度は特に大きな館山寮の修繕などありませんでした。
年度 賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 現預金残
2011(H23) 354 -623 2,506
2012(H24) 345 -89 2,762
2013(H25) 383 -342 2,803
単位:万円


・2014年度(平成26年度)~2016年度(平成28年度)

 2014年度には水上寮の解体工事を行いました。解体に先立って現地で「水上寮お別れの会」を催し、大勢の卒業生や旧教職員、さらには地元の関係者などが集まって名残を惜しみました。解体のための資金は300万円積立ててありましたが、実際には解体費が617万円ほど掛かりました。また同じ年に館山寮のボイラーが老朽化し、取替工事費が200万円必要となりました。

 2015年度は特に大きな館山寮の修繕などありませんでした。

 2016年度には館山寮の全面改修、及び厨房設備の更新、並びに食堂のLED照明化、冷房施設の設定等を行い、衛生面に配慮した清潔で効率的な厨房、そして過ごしやすい生活空間を実現することが出来ました。工事費は2,508万円かかりましたが、朝陽同窓会からの750万円の寄付金と定期預金の取り崩しで補うことが出ました。

 しかし厨房改修の結果、現預金残高は398万円にまで落ち込みました。

年度 賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 現預金残
2014(H26) 375 -617 -349 2,194
2015(H27) 329 -456 2,067
2016(H28) 395 750 -2,508 -306 398
単位:万円


・ 2017年度(平成29年度)~2019年度(平成30年度/令和元年度)

 2017年度には船倉が老朽化し、全面建て替えを余儀なくされました。また併せて生え茂った竹藪の伐採も必要となり、合計439万円を要しました。一方朝陽同窓会からは朝陽記念募金の一部として900万円の寄付を受けました。

 現預金残高が500万円以下になると、短期の資金繰り、例えば寮使用料収入が入る前に寮食事代を支払う場合には大変厳しくなります。足りない場合には朝陽同窓会から一時借用することも考えましたが、2018年750万円及び2019年900万円と朝陽記念募金の一部を館山寮改修用に寄付して頂き、何とか資金切れを免れました、

 2019年に9月8日に台風15号が襲来し、男子棟が全壊しました。朝陽同窓会では館山寮再建委員会を立ち上げ、再建のための活動を開始しました。また再建委員の努力により8,659万円もの保険金を受け取ることが出来ました。年末に朝陽同窓会の呼びかけで館山寮再建募金活動も始まりました。呼びかけにより2020年3月までの短い期間に、卒業生のみならずPTAや立川高校OB会からも180万円の募金がありました。
年度 賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 現預金残
2017(H29) 411 900 -439 -431 839
2018(H30) 399 -576 662
2019(R01) 398 180 8,659 -456 9,443
単位:万円


・2020年度(令和2年度)

 前年年末から始めた館山寮再建募金は2021年3月までに2、739万円に達しました。

 コロナの影響もあり臨海教室の開催は中止となりましたが、館山寮再建の第一歩として男子棟の解体撤去を行いました。費用は557万円で、運営費の中に含まれています。

 さらに館山寮再建第一期工事として、トイレ・風呂の改修を夏季に終了しました。設計監督はS43の原田さんのニジアーキテクトで、施工は石井工務店、総工費は1,550万円でした。
年度 賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 現預金残
2020(R02) 404 2,739 -1,550 -672 1,364
単位:万円

・総括

 館山寮の土地建物が資産として計上してあるので、貸借対照表だけ見ていると財団法人朝陽会は資産家に見えます。しかし資金収支上は、上に見たように大変苦しい状況にあります。また、土地は軽々しく売ることはできず、建物は老朽化して殆ど価値がありません。

 賛助会費の本来の目的は将来の設備の更改に備えるための資金です。しかし実際には館山寮の運営費が寮使用料収入だけでは賄えず、賛助会費を毎年流用消費してしまっています。そのため現預金が貯まらず、何か大きな設備投資が必要となると、朝陽同窓会からの募金に頼っているのが現状です。

 この状態を改善するには例えば寮使用料を引き上げれば良いのですが、現在すでに目いっぱい料金を上げていて一般宿泊料金と大差がありません。しかも夏の1月半しか営業しないので、館山寮の運営費を十分に賄うことは不可能です。

 第ニ期工事を推進して館山寮を復元し、臨海教室の再開を待ち望む気持ちは、もちろん卒業生の何方もお持ちです。しかし同時に将来の財団法人の運営、ことに資金収支をどうするか、しっかり考える必要があると思います。2007年に資金収支の改善を目指して企画書を策定しましたが、絵に描いた餅となりました。第二期工事を迎えるにあたり、みんなでしっかり将来の資金計画を作成をしようではありませんか。


2002年度から2020年度末までの総括表
2002年度末
現預金残高
賛助会費 募金 保険金 設備投資 運営費 2020年度末
現預金残
5,703 7,467 7,779 8,659 -11,955 -7,768 10,364
単位:万円